研究課題
基盤研究(B)
本研究は植物の中でも特に優れた環境適応能力を有する雑草を種たる材料として、環境ストレスの最たるものである光酸化傷害への耐性機構と、その発現に至る情報伝達の分子機構の解明を目指したものである。マメ科雑草のSesbania rostrataは強い耐塩性を有するが、本種は積極的に根から塩を吸収して地上部に移行させており、茎葉細胞におけるストレス回避機構が注目される。高塩は活性酸素の発生増加を引きおこすが、Srostrataの茎葉細胞では各種の抗酸化酵素活性が大きく、かつ、塩濃度上昇に伴う活性誘導も大きかった。また、植物の成育に必須の無機利用元素であるMgの欠乏ストレス下では、抗酸化酵素のうち細胞質型アスコルビン酸ペルオキシダーゼの応答が顕著に見られるため、抗酸化酵素遺伝子の発現誘導に至る過程の検討を行った。光が作用を強化させ、細胞の過酸化傷害を起こす化合物について、作用機序および耐性植物の機能を解析した。水稲用除草剤キンクロラックの作用発現における活性酸素の関与について検討するため、まず植物体内で発生するH_2O_2の定量法の確立を試みた。活性酸素は非常に高い反応性を有するため、実際に植物体内で生じる活性酸素分子種を同定・定量することは難しいとされるが、検討の結果、特定の植物種においては、化学発光法によってH_2O_2の定量が可能となった。また、本研究で導入したESRによる植物組織共存下での活性酸素発生測定法を確立した。マメ科植物のムクナが多量に生産するアレロパシー物質のL-DOPAは他の植物種の細胞に過酸化傷害をもたらすが、この作用はメラニン合成系が活性化されることにより発生が増加する活性酸素による傷害であることを明らかにした。また、L-DOPAの作用は植物種に選択的であり、これにはポリフェノールオキシダーゼによるL-DOPAの代謝促進が関与していることも示した。
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