研究概要 |
本研究では,属間雑種を利用したリンゴとナシの飽和連鎖地図を同時に,かつ効率的に作成するとともに,得られた情報をもとに有用遺伝子をマッピングし,リンゴやナシのDNAマーカーを利用した新育種法の開発の可能性を検討した。 1.胚培養を用いて育成したリンゴ‘ふじ‘とナシ‘大原紅'の対称雑種62個体を用い,連鎖地図を作成した。その結果,‘ふじ‘では,1348.1cM,17連鎖群,195遺伝子座からなる連鎖地図が,‘大原紅'では1345.4cM,17連鎖群,240遺伝子座からなる飽和した連鎖地図がそれぞれ作成された。作成された両品種の各連鎖群では,SSRを中心とした共優性の各遺伝子座がほぼ同じ順序と遺伝距離で対応し,リンゴとナシのゲノムのシンテニーが高いことが示唆された。 2.‘おさ二十世紀',‘大原紅',‘ふじ'の3品種の幼果からm-RNAを単離し,作成したcDNAライブラリーから得られたESTクローン約350種類についてシークエンスを行い,相同性検索を行った。その結果,ナシ果実で発現するESTクローンはこれまでに報告されたリンゴ果実等で発現する遺伝子と極めて相同性が高く,1〜2塩基多型(SNP)を示すものが多く,さらに6%の遺伝子で5塩基以上の挿入あるいは欠失変異が認められた。 3.‘おさ二十世紀'と‘大原紅'の交雑系統(Os×Ob)90系統を用い,開花・結実した系統について果実の成熟期,果形,果重,硬度,糖度,酸含量,追熟性の諸形質を調査し,作成された両品種の連鎖地図上に各形質についてQTLマッピングを行った。 4.リンゴ品種‘ふじ'へカラムナー形質を導入するために,‘ふじ'とカラムナー品種‘メイポール'とを交雑した。得られた系統を用いて,果実形質を調査するとともに,カラムナー形質や赤葉形質,果皮・果肉の着色形質について遺伝解析し,これらの形質に関与する遺伝子のマッピングを行った。その結果,‘メイポール'の第10連鎖群にはカラムナー遺伝子(Co),第9連鎖群には赤葉遺伝子(Rl)がそれぞれマッピングされた。
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