研究課題
基盤研究(B)
複合体-Iの強力な阻害剤であるフェンピロキシメイトの結合部位を光親和性標識実験によって同定するために、トリチウム標識した光分解性フェンピロキシメイト([^3H](trifluoromethyl)-phenyldiazirinyl fenpyroximate : TDF)を合成した。[^3H]NaBH_4によるトリチウム標識以降の反応および光親和性標識実験は、共同研究者である矢木隆雄氏の研究室(The Scripps Research Institute)で行った。ジアジリン環を導入したTDFは、ウシ心筋複合体-Iにおいてフェンピロキシメイトと同等の強力な阻害活性を発揮することが確認された。ウシ心筋ミトコンドリアを用いた光親和性標識実験の結果から、フェンピロキシメイトの結合部位はミトコンドリア内膜アームに存在すると考えられているサブユニットND5であることが明らかになった。サブユニットND5に対して作成した抗体の免疫反応が弱かったためにサブユニットND5の同定作業は容易ではなかったが、最終的には二次元電気泳動によって同定することができた。これまでいくつかの複合体-I阻害剤の結合サブユニットが光親和性標識実験によって同定されているが、ミトコンドリア内膜アームに位置するサブユニットが同定された例は始めてである。この結果から、複合体-Iのプロトンポンプ活性に膜内サブユニットが関与している可能性が始めて実験的に示唆された。今後、線虫ミトコンドリア複合体-Iについても同様の実験を行う予定である。
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