研究概要 |
過疎化,高齢化の著しい中山間地域における農村環境整備の計画手法について,広域的な立場,都市との連携交流,耕作放棄地対策,住民参加,地域資源活用の観点から調査研究を行った。それぞれの分担のもとで計画課題を明らかにするとともに,以下のような知見,成果が得られた。 1)高橋は,石川県の人口動態分析を行い,15〜24歳の青年層で学卒後の就職や進学のための転出が人口減少・高齢化の主たる原因であり,地域内での就業機会の確保と転出者の定年後の受け入れが重要課題となることを示した。また,農産物直売所を取り上げ,来訪者の季節変動や居住地分布および関係農家の営農意向等について調査し,来客は近隣市町村が多く,直売所が営農意欲の向上に寄与し,現金収入と農家,顧客のつながりが重要であることを示した。 2)三宅は,兵庫県の農家民宿を対象に経営状況,自治体の支援状況,地域住民の関わり等を調査するとともに兵庫県内の構造改革特区における市民農園を契機とした地域活性化を展望した。また,里山保全,空き家活用の現状把握と課題抽出を行い,里山保全では,ボランティアの役割が評価される一方で,地域住民の関与を高める工夫が必要であること,空き家活用では,登録制度が十分に機能しておらず,空き家所有者および利用希望者の意識差が活用阻害要因であることを示した。 3)九鬼は,和歌山県の農業集落で,土地利用と獣害の発生状況を調査し,減反によって林地化を選択した農地や耕作放棄地を有害獣が生息域として利用して被害を拡大させていることを示すとともに獣害対策や耕作放棄地活用も含めた中山間地域での農村整備の考え方と課題を提起した。 4)星野は,都市農村交流に取り組む地域を交流型地域づくりと定義し,計画論的視点から地域づくりにおけるHP開設の意義と可能性を考察した。住民と共にHPを立ち上げ,効果を観察し,交流型地域づくりと参加型HPづくりが結合することにより情報発信と地域活性化の相乗効果が期待できることを検証した。 5)松本は,中山間地域集落における地域資源意識を調べるとともに,ワークショップの開催,地域資源マップ等の作成を通して住民が主体的に参加するふるさと再生の構想づくりを実践・支援し,一連の支援過程に潜む課題を検討した。地域資源マップを活用すると地域資源に目配りした計画策定が可能であり,住民意識を高め,住民が参加しやすい計画手法になることを示した。
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