研究概要 |
移植苗の弱光照射低温貯蔵法の実用化に向けた最適な光環境制御法の開発を目的として,(1)移植苗の貯蔵中のCO_2交換速度がつねに0となるようにして結果的に貯蔵植物の乾物重変化を抑制する照射光強度自動制御貯蔵システムの開発,および(2)一層の品質向上のための赤色光への青色光混合効果の検証とその最適混合比率の策定を行った。(1)および(2)の目的のために,トマト接ぎ木セル成型苗を貯蔵対象として試作した貯蔵システムの運転試験を複数回行った。この複数回の試験により,ハードウエア構成等の変更や種々の改良・修正を行い,貯蔵システムを完成した。また,一定の照射光強度(光強度の自動制御を行わない)条件下で,赤色光への青色光混合効果の検証と最適混合比率のための貯蔵試験を行ったところ,赤色光への青色光混合は数%程度の小さな比率であっても効果のあることが確認され,その最適混合比率(光合成有効光量子束密度(PPFD)ベース)は50%であることが示された。最後に,完成した貯蔵システムを用いて,貯蔵開始時の青色光混合比率が10および5%でそれぞれ赤色光PPFDを自動制御する2区,および100%赤色光で自動制御でする区および制御しない一定値の区の,計4区で貯蔵試験を行った。この結果,光強度を自動制御した区では,貯蔵中の乾物重変化は認められず,また10および5%の青色光混合は赤色光単独よりも苗質維持に有効であることが示された。さらに,青色光を混合すると,照射光自動制御区の総PPFDが赤色光単独の場合よりも低く推移する,すなわち貯蔵中の苗の光補償点が低くなるという興味深い新たな知見を得た。
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