研究概要 |
低温馴化時のWCSP1の発現誘導が,mRNAレベルでは4倍程度であるが,タンパク質レベルでは1000倍以上に達し,翻訳レベルにおいて主要な調節を受けることを明らかにした.また,in situ解析の結果から,WCSP1の発現は,茎頂付近及び若い葉細胞で強く観察された.WCSP1は大腸菌cspA,cspB,cspE,cspG四重変異体の示す低温感受性を相補したことから,大腸菌CSPと同様のRNAシャペロン機能が推定された.実際にWCSP1が大腸菌内でRNA2次構造消活性を持つことを示し,試験管内でもその活性が証明されたことから,WCSP1は植物のRNAシャペロンであると判断された.また,欠失タンパク質を用いた解析から,RNAシャペロン活性にはZr-finger(ZnF)を含むC末端側領域は必要なく,CSDのRNA結合モチーフが不可欠であった.WCSP1タンパク質は煮沸後もその構造及び機能を維持した.その性質はグリシンに富む領域(GR)の有無に依存しなかった.WCSP1の細胞内局在性解析の結果,CSP1-GFP融合タンパク質は核及び小胞体に局在した.小胞体への局在にはC末端側GR及びZnF領域を介したタンパク質間相互作用が必要が必要と考えられた.WCSP1タンパク質固定化カラムを用いたターゲットRNAスクリーニングの結果,リボソームタンパク質S15a等数種類の候補分子が選抜された.WCSP1発現イネは,やや矮性であり,第2葉が大きく,稔実率が低かった(60-80%).マイクロアレイを用いてWCSP1発現イネ中で発現上昇(11個)或いは減少(16個)する遺伝子を同定したが,その中に低温適応と関連するものは見いだされなかった.
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