研究課題
基盤研究(B)
精子ユビキチン-プロテアソームシステムは、マボヤ精子の卵外被通過の際に精子通過口を開けるライシンとして機能している事をすでに報告している。本研究では、このライシン系を構成する分子の同定に焦点を当てて研究を行った。当初、マボヤ精子抽出液あるいは精子浸出液(精子の活性化に伴って放出される画分)から卵黄膜をユビキチン化する酵素を精製することを試みたが、構造解析を行うのに十分な量が得られないことが判明した。そこで、ゲノムドラフト配列がすでに決定されているカタユウレイボヤを用いて、精巣で発現しているユビキチンリガーゼ(E3)とユビキチンコンジュゲーティング酵素(E2)を検索した。まず、RINGドメインを有するE3候補分子のなかから精巣で比較的強く発現している遺伝子モデルを2つ選び、精巣での発現の有無をRT-PCRで確認した。一方の分子(ci100130063)は、分子量86Kのタンパク質で、RINGドメインの他にTRPドメインとLONドメインを有していた。もう一方(ci100137400)は分子量57Kで、RINGドメインの他にFERMドメインも有していた。両者に対する抗体を作製し、精子における発現を解析した結果、ユウレイボヤ精子における発現量は低く、また交差反応する複数のバンドが検出された。一方、マボヤ精子を用いて同様の実験を行ったところ、この抗体が認識するタンパク質が存在することが確認された。E2の候補分子に関しても、遺伝子モデルから探索し、精巣で高発現している複数の酵素をRT-PCR法により確認した。ここで得られた酵素が、実際に受精の場で機能しているか否かは今後の課題である。
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