研究課題
基盤研究(B)
慢性リウマチの痛みや神経因性疼痛が寒冷により増悪する機構の解明のため、以下の実験を実施した。1)アジュバント単関節炎モデル動物の培養後根神経節細胞において、Caイメージングにより冷感受性を調べた。10℃までの冷却に反応した細胞の割合は炎症群、健常群ともに約80%であったが、マスタードオイル(MO, TRPA1のアゴニスト)感受性細胞は炎症群では56%と、健常群の20%に比べて有意に高く、またメントール(MT, TRPM8のアゴニスト)感受性細胞のほとんどがMO感受性であった。MO感受性でMT感受性のない細胞の冷閾値を調べたところ、炎症群では18.4℃であり、健常群の14.0℃と比べて高い傾向があり、炎症状態ではTRPA1の活性化閾値温度が上昇していることが示唆された。2)培養後根神経節細胞の酸感受性の温度依存性を明らかにした。3)アジュバント関節炎モデル動物を低温(15℃)曝露することにより、機械痛覚過敏が増悪することを明らかにした。4)炎症時の感作機構の基礎的研究としてC線維受容器へのATPの作用を調べた。ATPは低濃度(10μM)ではP2X受容体を介し熱反応を抑制し、高濃度(1mM)ではP2Y受容体を介して促進した。5)炎症時に出現するメディエーター間の相互作用を明らかにするため、ブラジキニン(BK)とノルアドレナリン(NA)の相互作用を、C線維受容器の単一神経記録により調べた。BKに対する放電増加反応はNA前投与により増強され、NAによる放電増加反応はBKにより増強された。NA単独での効果は大変弱いが、他のメディエーターとの共同で大きな効果を発揮しうる可能性が示唆された。6)筋に伸張性収縮負荷により筋機械痛覚過敏を起こすことができた。このモデルで筋C線維受容器活動を調べたところ、機械感受性のみが増大していた。
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