研究概要 |
ヒスタミンは,生体内においてアレルギーや免疫反応,胃酸分泌,神経伝達などに重要な物質であり,必須アミノ酸であるヒスチジンよりヒスチジン脱炭酸酵素によって合成される.私たちは,遺伝子ノックアウト法によって,ヒスチジン脱炭酸酵素遺伝子の発現を排除し,ヒスタミンの合成を欠如させたマウスを作製し,その表現系につき研究をすすめている. 1 気管支喘息モデルの研究 その結果,このマウスでは気管支喘息モデルにおいて気道過敏性はあまり変化がなかったものの,好酸球の浸潤が強く抑制されていた(Am J Respir Crit Care Med2003). 2 トランスジェニックマウスの作製 ニワトリ・アクチン・プロモーターの下流にHDC遺伝子を繋いだプラスミッドのトランスジェニックマウスに,皮膚創傷をおこすと野生型マウスに比べて,創傷治癒のスピードが促進された.このモデルを,ノックアウトマウスに作製すると創傷治癒が遅れた.さらに,その差を担う分子は,bFGFであることが薬理学的に証明された(投稿中). 3 中枢神経系,胃酸分泌におけるヒスタミンの役割 ヒスタミンは概日リズムの調整や,行動に関連し,痙攣の閾値を動かすことを明らかにした(Mol Brain Res, Euro J Neurosci, Epilepsia 2004).また,胃壁の肥厚についてヒスタミンの役割がノックアウトマウスを使用することによって一層明らかになった(Am J Physiol 2003).また,劇症肝炎モデルでヒスタミンが劇症肝炎の治癒に必要であることが判明した(Gastroenterol 2004).さらに,アテローム性動脈硬化症にヒスタミンは内皮やプラーク形成に重要であることが判明した(Circ Res in press).
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