研究概要 |
硝酸薬耐性発現機序における活性酸素種の役割を明らかにするため,ニトログリセリン(NTG)貼付剤を10日間連続投与したウサギ(NTG群)を作成し、下記の研究を行った。 1)NTGを慢性長期投与したウサギの内皮除去腸間膜動脈抵抗血管では、NTGの弛緩反応のみならず、NO-donorであるNOC-7の弛緩反応が減弱した(硝酸薬耐性血管)。さらに,この硝酸薬耐性血管のスキンド標本では,8-Br-cGMPによる弛緩反応も減弱した。この硝酸薬耐性スキンド標本において,conventional and/or novel protein kinase C(PKCs)抑制薬であるGF109203XやPKC活性化薬であるphorbol 12,13-dibutyrateは8-Br-cGMPによる弛緩反応に影響を与えなかった。これらの結果より、NTG投与による硝酸薬耐性腸間膜動脈抵抗血管では、cGMPによる平滑筋細胞の弛緩反応の減弱機序にconventional and/or novel PKCsが関与していない可能性が示唆された。 2)ウサギ肺内静脈におけるアセチルコリンの内皮依存性弛緩反応に対するNTG長期慢性投与の効果と、その効果発現における1型アンジオテンシンII受容体(AT_1R)の役割について検討した。ウサギ肺内静脈において、アセチルコリンは主に内皮細胞でのNOの生成・遊離増加により血管弛緩反応を発生していることが明らかとなった。また,NTGの長期慢性投与はアセチルコリンによる内皮依存性弛緩反応をダウンレギュレーションさせること、この機序に内皮細胞での活性酸素発生増加が関与していること、さらに、この活性酸素発生増加はAT_1Rの活性化を介していること、が明らかとなった。 3)ウサギ大動脈弁内皮細胞を用い、アセチルコリンによる膜過分極反応に対するNTG長期慢性投与の効果と、その効果における活性酸素の役割について検討した。大動脈弁内皮細胞において、アセチルコリンはcharybdotoxin感受性およびapamin感受性K_<Ca> channelsの活性化により膜過分極反応を発生させること、この過分極はNTGの慢性投与によりダウンレギュレートされること、このダウンレギュレートされた膜過分極は抗酸化剤のin vitro投与によって影響を受けないが、NTGとアスコルビン酸の慢性併用投与により正常化されること、が明らかとなった。また,NTG慢性投与による内皮細胞の膜過分極反応のダウンレギュレーションは、内皮細胞で発生増加する活性酸素の慢性作用による可能性も明らかとなった。
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