配分額 *注記 |
13,100千円 (直接経費: 13,100千円)
2006年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
2005年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
2004年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
2003年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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研究概要 |
本研究では,不明の点が多い骨・軟部組織腫瘍の細胞遺伝学的・分子病理学的特性を明らかにし,さらにmatrix metalloproteinase (MMP)の発現について検討した.主要な成果は以下のごとくである。 1)脱分化脂肪肉腫の分子細胞遺伝学的分析:本腫瘍は高分化脂肪肉腫の中に低分化の非脂肪性肉腫成分が出現するものであるが,本態および細胞遺伝学的特性については不明の点が多い.我々は脱分化脂肪肉腫の培養細胞をはじめて確立し、multicolor FISH (mFISH)を施行した.本腫瘍の染色体分析では複雑な核型と巨大マーカー染色体がみられ,mFISH分析で巨大マーカーは12番染色体の成分を含んでいることを明らかにした.この巨大マーカーは高分化脂肪肉腫に出現するものと同様のものであることから、脱分化脂肪肉腫は高分化脂肪肉腫の特徴の一部を保持していると考えられる。 2)悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)のcDNA microarray分析:MPNST6例と良性末梢神経鞘腫瘍(BPNST)5例について,cDNA microarrayを用いて遺伝子発現プロファイルを比較検討したところ,MPNSTに発現増強の認められる遺伝子として,survivin, tenascin Cが検出された.SurvivinはMPNST腫瘍細胞に発現しており,Tenascin CはMPNSTの間質,特に浸潤先端部間質に強く発現していた.これらの結果より,Survivin, tenascin CがMPNSTの増殖,浸潤に関係する可能性が示唆された。 3)MMPは腫瘍の浸潤・転移に重要な役割を果たすが、末梢神経鞘腫瘍(PNST)においては十分な研究はなされていない。我々は、PNST40例におけるMMP, MMPインヒビター、MMP発現促進因子であるemmprinの発現を検討した。悪性PNST (MPNST)では、良性PNST(神経鞘腫、神経線維腫)に較べて有意に高いemmprin, MT1-MMPの発現を示し、その浸潤性との相関が考えられた。また、MMP-9高発現は神経鞘腫に認められるが、神経線維腫,MPNSTでは見られず、一方、MMP-1高発現は神経線維腫,MPNSTに認められるが、神経鞘腫には認められず、その両者の起源の違いに関連している可能性が推定された。 4)我々は類上皮肉腫(ES)で,MMP産生促進因子emmprinが腫瘍細胞の細胞膜に発現し,MMP-2がES細胞とその周囲の線維芽細胞の細胞質に発現していることを発見した.Emmprin陽性のES細胞は,線維芽細胞との共培養系において,MMP-2の発現を有意に増強し,その増強活性は抗emmprinペプチドおよび抗emmprin抗体によって容量依存性に抑制された,共培養系のES細胞には主としてemmprinが細胞膜に発現しており,MMP-2は線維芽細胞に強く発現していた.これらの成績から肉腫においても,emmprinを介した腫瘍・間質相互作用によるMMPの産生調節が行われており,腫瘍の浸潤に重要な役割を果たしているものと考えられ,さらにemmprinが治療標的と成り得ると期待される.
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