研究課題
基盤研究(B)
本研究は、転写因子インターフェロン制御因子-2(IRF-2)を欠損するマウスにおいて自然発症するT細胞依存的炎症性皮膚疾患の発症機構における免疫系の異常の関与を検討するために、このマウスで見られる種々の免疫異常のメカニズムを解析したものである。まず、本マウスにおいて、脾臓樹状細胞(DC)サブセットのうちCD4+のものが野生型マウスに比較して激減していることを観察し、その原因が骨髄細胞内にあることを骨髄キメラマウスを用いて明らかにした。さらに、インターフェロン-α/β受容体を欠損するマウスとIRF-2欠損マウスを交配して二重欠損マウスを作成し、このDCサブセット異常が、このマウスですでに我々が過去に報告した過剰なIFN-α/βシグナルに原因することを明らかにした。この二重変異マウスでは、皮膚炎症もまた消失しており、DCサブセット異常と皮膚炎の関連が疑われた。一方、IRF-2欠損マウスではNK細胞の分化異常も報告されている。今回我々は、この分化異常のメカニズムについても検討を加え、IRF-2はNK細胞の最終分化ステップにおいて必要とされること、さらに、Ly49などのNK受容体の発現パタンから骨髄内に残存する未熟NK細胞に比べ脾臓内のNK細胞は、よりいっそう未熟な表現型を示すこと、それはIRF-2欠損NK細胞が骨髄内で高い頻度でアポトーシスを起こしており、末梢のNK細胞プールに貢献できないためであることなどを明らかにした。このような未熟な表現型にもかかわらず、IRF-2欠損NK細胞は正常なキラー活性を示し、従ってキラー活性はNK細胞最終成熟の指標にはならないという重要な知見が得られた。さらに、上記二重欠損マウスにおいてもNK細胞の分化異常は観察され、DCサブセットとは異なる機構でこの異常が引き起こされていることが明らかとなった。さらに、もうひとつの免疫異常である自発的なTh2の原因を好塩基球の異常増殖であると同定した。
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