研究概要 |
本研究は、慢性気道炎症・感染症の病態に関連し、気道粘膜防御に関与する遺伝子群の遺伝子多型を明らかにし、その疾患との関連および機能解析を行うことを目的にするものである。期間中に、ムチン遺伝子ファミリーの(MUC1,2,4,5AC,5B,8)とデフェンシンファミリーの(DEFB1,DEFB2)についてプロモーター領域をDNAよりPCR増幅し、直接シーケンス法にて遺伝子変異を同定した。またCFTR遺伝子のexon 9 skippingに関連するイントロン8の多型についてもその頻度を検討した。慢性気道炎症を特徴とするびまん性汎細気管支炎について、症例対照研究により、MUC5Bのプロモーター多型に疾患と関連する変異が複数存在することを明らかにしたが、ヒト気道系粘液産生細胞株を用いて、疾患関連ハプロタイプの上記プロモーター活性を検討したところ、アジア人に特有の疾患抵抗性ハプロタイプは、MUC5Bの発現を抑制する方向に働くことが示された。さらに免疫染色によって、慢性気道炎症を生じた病的状態においては、気管支上皮に、MUC5Bの異所性発現が見られることが明らかになった。またDEFB1遺伝子のプロモーター領域の遺伝子変異についても、真菌感染に抵抗性のハプロタイプにおいて、DEFB1遺伝子のプロモーター活性が強く、いずれの例も、疾患に関連するプロモーター領域の変異が当該遺伝子の機能と発現に及ぼす影響が、慢性気道炎症・感染症の病態をうまく説明するものであることが明らかになった。CFTR遺伝子のイントロン8の多型の中で、正常のCFTRの発現低下をもたらす疾患関連アリルである5Tアリルは、日本人では1から2%に存在し、このhomozygoteと慢性気道感染症の関連をさらに検討する必要があると考えられた。
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