研究概要 |
本邦の多発性硬化症(MS)の臨床病型として、病変が中枢神経内に播種する通常型MS(CMS)と視神経炎と脊髄炎のみを呈する視神経脊髄型MS(OSMS)がある。その臨床及び免疫病態を比較解析した。 1,臨床解析:MS120例の病型頻度は、CMS(60.8%)、OSMS(22.5%)、脊髄型MS(7.5%)、二次進行型MS(5.0%)、一次進行型MS(4.1%)であった。OSMSではCMSと異なり二次進行型への移行はなかった。 2,Th1/TGh2バランス: OSMSではCMSに比べて髄液中のCCR5+CD4細胞の比率が有意に低値で、髄液IgG1%の上昇がみられなかった。したがってOSMSではCMSよりTh1の関与がより少ないことが示唆された。 3,病理学的解析: OSMSでは著明な組織破壊、高度なマクロファージ浸潤と小血管壁への免疫グロブリンや補体の沈着がCMSと比べて特徴であった。 4,オリゴクローナルバンド(OB): CMSにおいてOBと最も相関する病変は側脳室周囲病変であった。 5,髄液IgGの標的抗原解析: MS症例の髄液IgGの認識エピトープをPhage display法により検討した。ヘルペス属ウイルスに相同性の高いアミノ酸配列が高頻度に検出されたが、症例毎にその配列が異なった。 6,再発時に増幅するT細胞クローンの検出: CDR3 Spectratyping解析によりCMSでVβ5.2が高頻度に増幅していた。 7,0SMSの疾患特異的自己抗体の検出:間接蛍光抗体法によりOSMS症例の約60〜70%及びOSMSのハイリスク群の約半数例のみにおいて、血清中には脳微小血管、軟膜、軟膜下組織、Virchow-Robin Spaceなどに結合するIgGが存在することを見出し、NMO-IgGと命名した。その病態への関与や早期診断への有用性の検討が必要である。
|