研究概要 |
研究目的:新規MMP制御遺伝子RECKの原発性肺癌組織における発現を調べその臨床的意義を明らかにし,肺癌治療への応用の可能性を探る。 研究方法:1)免疫染色,ウエスタンブロット法およびリアルタイムRT-PCR法により約200例の非小細胞肺癌臨床サンプルを用いて,RECKの発現と腫瘍血管新生との関係,個々の症例の背景因子との関連を臨床病理学的に検討した。2)RECKを強制発現させた肺癌細胞株を用いて,in vitroおよびin vivoでRECK遺伝子導入の効果を検討した。3)リポソームベクターを用いたRECK遺伝子治療の可能性を検討するため,肺癌細胞株をマウス皮下移植してRECK遺伝子を組み込んだプラスミドを腫瘍内注入した。 結果と考察:1)RECKの遺伝子発現・蛋白発現とも正常肺部分に比べ肺癌部分で顕著に低下していた。RECKの発現と腫瘍血管新生の間には負の相関を認めた。同時にRECKとMMP-2,-14の発現に有意な相関を認めRECKによる血管新生抑制機序の一端を担っている可能性が示唆された。予後との相関に関しては,RECK発現の低下している腫瘍では有意に予後不良であった。特に縦隔リンパ節転移陽性N2症例においてRECK発現の影響が顕著であった。2)RECKを強制発現させた肺癌細胞株H1299の細胞増殖(in vitro)は,コントロールに比して差を認めなかった。しかしながらこの細胞株をマウス皮下に移植したモデルでは,腫瘍の局所進展が強く抑制されているとともに腫瘍内血管新生が有意に抑制されていた。3)RECK導入治療群では,コントロール群に比して腫瘍の局所進展が抑制され,腫瘍内血管新生の抑制効果が認められた。 結論:非小細胞肺癌におけるRECK発現低下が予後不良因子であることが示され,治療や診断のマーカーとして有用である可能性が示唆された。またRECK遺伝子導入による腫瘍血管新生抑制効果および局所における抗腫瘍効果が確認された。さらには非ウイルスベクターを用いたRECK遺伝子治療の有効性が示された。
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