配分額 *注記 |
14,200千円 (直接経費: 14,200千円)
2005年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2004年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2003年度: 7,400千円 (直接経費: 7,400千円)
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研究概要 |
本研究は,神経膠芽腫浸潤の際に生じる蛋白分解酵素と脳ECM環境の相互作用を検討し,浸潤抑制治療開発へ新たな知見を加えることを主な目標として行われた. 平成15年度は,脳腫瘍における蛋白分解酵素,matrix metalloproteinaseについてのこれまでの知見を総説として発表した.さらに,神経膠芽腫の浸潤抑制分子として2001年に我々が同定したN-Tes(特許取得)の関連分子であるTestican-2は浸潤の促進に働き,Testican-1,3は抑制に働くことを見出した.この他に,細胞内シグナル伝達機構を担うアダプター蛋白Crk Iのリン酸化が神経膠芽腫の浸潤と関連すること,またアポトーシス誘導因子であるApaf-1の低発現がこの遺伝子存在部位のLOHと関連することなどを報告した. 平成16年度は,大脳基底核部位原発の神経膠芽腫には大脳半球由来のものよりも高頻度にTP53のmutationが起こることを報告した. 平成17年度は,新規のmatrix metaroprotease群ADAMTS familyのうち,ADAMTS-5が神経膠芽腫において高発現しており,さらにこの酵素が脳内のプロテオグリカンを切断することによって脳腫瘍の浸潤過程に関与していることを報告した.その他にも小児の悪性脳腫瘍である髄芽腫についてcyclin D1が予後規定因子となること,また同分子が新しい脳腫瘍概念である異型奇形腫様・類横紋筋腫瘍(AT/RT)においても高発現していることを報告した.さらに,これまでの悪性脳腫瘍における治療法や概念をまとめた「脳腫瘍の外科-Biological behaviorにのっとった新しい治療戦略-」を編纂,出版した. 本研究は,予後不良の悪性脳腫瘍に対して,脳内浸潤の機序や遺伝子発現に関する重要な知見を加えることができた点で,一定の成果を挙げた.
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