研究概要 |
海外で報告されている累進屈折力眼鏡の近視進行予防効果について、日本人学童を対象として無作為化比較対照試験を実施した。95名の学童(6〜12歳)を無作為に2群に分け,1群はトライアル前半(0〜18か月)に累進屈折力眼鏡,後半(18〜36か月)に単焦点(通常)眼鏡を使用し,もう1群ではトライアル前半に単焦点眼鏡,後半は累進屈折力眼鏡を使用した(クロスオーバー・トライアル)。調節麻痺下の自動レフラクトメータの測定値を基に,それぞれの眼鏡装用期間内の近視進行速度(ジオプトリ[diopters : D]/年)を比べることで,累進屈折力眼鏡の近視進行予防効果を判定した。さらに経過観察中は、調節ラグ、眼位、眼軸長、累進屈折力眼鏡のアライメント異常をを評価した。その結果,単焦点眼鏡に比べて,累進屈折力眼鏡は近視進行を有意に抑制する(p=0.0007)ものの,抑制効果としては比較的小さい(平均-0.11D/年)ことが示された。さらに統計学的に、治療-治療期間の交互作用(分散分析、混合モデル)が有意(P=0.022)で、装用開始が早いほど、最終的な抑制効果は大きいことが示唆された。この臨床試験で得られた累進屈折力眼鏡の効果や特性は,人種や生活環境が異なる米国で実施された無作為化比較対照試験,correction of myopia evaluation trial(COMET)とほぼ同様の結果といえる。
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