研究概要 |
1.データ集積:成人ボランティア5名から経頭蓋骨Doppler(TCD)を用いて脳血流速度,動脈圧,心電図(ECG)の信号をAD変換後にPCに記録した。 2.動的脳自動調節能解析(周波数領域解析)の開発 1心拍ごとの平均動脈圧と脳血流速度を,ECGのR波を軸に補間処理後、再サンプルイングした。新しく得られた平均動脈圧(MAP)と平均脳血流速度(Vmca)の262個のデータを、高速フーリエ変換、MAPとVmcaのスペクトラム(S_<xx>(f)とS_<yy>(f))および両者クロススペクトラム(S_<xy>(f))を計算した。伝達関数H(f)からコヒーレンス(Cho), Gain, Phase算出,動的脳自動調節能を解析した。PaCO2<40mmHgでは0.1Hz以下でGainとChoは低下、Phaseは0.3Hzまでは陽性であった。PaCO2>50mmHgでは0.05Hz以下でGain増加、Choは上方にシフト(特に0.1Hz以下で著名),Phaseは0.1Hzまでは陽性であった。PaCO2<40mmHgに戻すとこれらの変化も戻った。 3.静的自動調節能曲線での評価 (1)実験モデルの作成:全身麻酔下の雑種成猫5匹において,Laser Dopplerを用いて脳局所血流(rCBF)とTCDを用いてVmcaを測定,さらに,ECG、MAPの4信号をAD変換,PCに取り込んだ。 (2)実験のプロトコール:PaCO2=35〜40mmHg, MAP=90〜100mmHgの時のrCBFとVmcaをそれぞれ100%とし,脱血によりMAPを70mmHg, 40mmHgに低下,返血と昇圧剤によりMAPを120mmHg, 180mmHgに上昇させ,5〜10分間維持,開発した方法で動的脳自動調節能を算出して,静的脳自動調節曲線上で評価した。 (3)結果:0.07Hz>,0.07〜0.2Hz,0.2Hz<の3周波数領域に分けてそのパワーを検討,MAP=40mmHgでは0.07Hz>のChoが有意に増加,MAP=180mmHgでは3周波数領域すべてにおいてChoが有意に増加した。 4.最終結論 MAPを入力系,Vmcaを出力系とした伝達関数による解析では,0.07Hz>のChoの変化は,静的自動調節能とパラレルに反応している。ベッドサイドでの動的自動調節能の評価は可能で信頼出来る。
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