研究概要 |
チタンは生体親和性,耐食性,軽量,高強度,低熱伝導率,安価であるなど多くの利点を有し,歯科材料として今後大きな期待が寄せられている金属材料である.しかし高融点,高温での酸素,不純物との高反応性などから鋳造が難しく,解決すべき問題点もある.この解決策として,チタンの合金化による融点降下,反応硬化層の抑制が考えられ,申請者らは各種チタン二元合金について,硬さ,耐食性,展延性等を調べ,元素の種類とその組成によっては,歯科に応用できる可能性があることを明らかにしてきた. 一方,これらのチタン合金を歯科に応用するためには,審美的な観点から,これらが陶材焼付前装冠に応用できることが必須である.本研究課題に関しては,平成13年度〜14年度科学研究費補助金による研究により,陶材焼付前装冠用合金としての要件である陶材との焼付強度と熱膨張係数をISO9693規格に従って測定した. 今回の科学研究費では,主に金-チタン合金に関し,焼付強度,前装冠としての適合性などを検討し,陶材焼付前装冠への応用の可能性を調べた. その結果,以下のことが明らかとなった. 1.金1.6wt%チタン合金は,ISOで規定された25MPa以上の焼付け強度を示し,対照として検討した純チタン,従来型陶材焼付用金合金と差が認められなかった. 2.ISO規格による金1.6wt%チタン合金の熱膨張係数は14.4×10^<-6>/℃で,従来型陶材焼付用金合金各合金(14.1×10^<-6>/℃)とほぼ同じであった. 3.金1.6wt%チタン合金の臨床形態による適合精度を検討した結果,その適合精度は従来型焼付用金合金と同じく良好な適合状態を示した.また,支台辺縁部の彎曲の影響も従来型焼付用金合金の場合と同じであった. 今後は,チタン成分の多いチタン合金,鋳造によらないチタンおよびチタン合金(CAD/CAMによるもの)について,さらに研究を進め,チタン合金の臨床応用を進めていきたい.
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