研究概要 |
甲殻類から抽出したキトサンは,生体内で分解吸収され抗原性が低い物性である.このキトサンは有機酸で容易に溶解することが出来,ゾル状態となる.このゾルはアルカリ物質でゲル化させることが可能である.脱アセチル化度85%と99%のキトサンをそれぞれに用い,有機酸で溶解したキトサンゾルとハイドロキシアパタイト顆粒,CaO粉末とZnO粉末を混合した合成粉末の両者を練和することによる自己硬化型の骨補填材の開発を行った.それぞれのゾルと合成粉末を練和して作製した圧縮試験片を擬似体液中の生理食塩水中に1日,7日,28日と56日間浸漬した後に圧縮強さの測定を行った.また,浸漬液中に溶出したCaイオン,Pイオン,Znイオンについても分析を行い,各元素の溶出量の測定を行った.また,各浸漬液のpHの変化についても測定を行った.その結果,以下の結論が得られた, 1.脱アセチル化度95%のキトサンを用いて練和した骨補填材の圧縮強さは,浸漬時間が長くなるにしたがって小さくなる傾向であったが,減少率は脱アセチル化度85%と比較して小さかった.これは浸漬液中での脱アセチル化度85%の溶解量が99%よりも多いためと考えられた. 2.脱アセチル化度85%と99%のキトサンを用いて練和したそれぞれの骨補填材を浸漬した生理食塩水のpHは浸漬1日後が最も小さく,浸漬時間が長いと大きくなった.この現象は溶出する元素によると考えられた.両者のキトサンの差は認められなかった. 3.脱アセチル化度99%のキトサンを用いて練和した骨補填材を浸漬した溶液中のCaイオン量は浸漬1日後が最大であり,28日後が最も少なかった. 4.Znイオンの溶出量は脱アセチル化度85%のキトサンを用いた場合,浸漬後56日目が脱アセチル化度99%よりも多く認められた. 5.脱アセチル化度85%のキトサンを用いるより99%のキトサンを用いることによってラット脛骨での骨伝導性は良好な結果が得られた.
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