配分額 *注記 |
12,800千円 (直接経費: 12,800千円)
2005年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2004年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2003年度: 7,400千円 (直接経費: 7,400千円)
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研究概要 |
本研究では変形性関節症患者の関節滑液中でヒアルロン酸(HA)の低分子化が生じることに着目し、関節軟骨細胞の代謝に対する低分子HAの影響を検討するとともに、HA低分子化に対する制御法について検討を行った。その結果、細胞外基質領域におけるHAの分解、低分子化は、細胞外基質分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼの産生を亢進することが明らかとなった(Ohno-Nakahara M. et al., J.Biochem. (Tokyo) 135 : 567-575, 2004. ; Ohno S. et al., Arthritis Rheum. 52 : 800-809, 2005.)。一方で、滑膜細胞にTGF-βなどの増殖因子を作用させることにより、高分子量HAの産生に重要なHAS-2の発現が亢進することが明らかとなった(Tanimoto K. et al., J.Dent. Res., 83 : 40-44, 2004.)。 一方、近年、変形性関節症(osteoarthiritis ; OA)患者の滑液中においてHAの低分子化が生じると同時にOA患者の滑膜においてヒアルロニダーゼ(HAase)遣伝子の中でもとくにHYAL2発現は健常者に比較して有意に増加(4倍以上)していることが明らかになってきた(Yoshida M et al. Arthritis Res Ther, 6(6), R514-520, 2004.)。 そこで我々は滑膜や軟骨などの関節組織への過剰な機械的負荷が滑液中のHA代謝に及ぼす影響について検討を行った。 過剰な機械的負荷は、滑膜細胞のHYAL2遣伝子発現およびHAase活性を増強することが明らかになった。軟骨細胞においても、過剰な機械的負荷によりHYAL2遺伝子発現は増強したものの、HAase活性についてはほとんど変化が認められなかった。また、HYAL2遺伝子を特異的に抑制するsiRNAを作製し、実験系において添加したところ、siRNAを添加していないコントロールでは機械的負荷によりHAase活性が増強したのに対し、HYAL2 siRNA添加群ではヒアルロニダーゼ活性がほとんど認められないことが明らかになった。 以上のことより、関節疾患に認められるHAの低分子化は軟骨破壊に直接関与し、滑液中のHA低分子化の原因として過度な機械的負荷により誘導されるHYAL2遺伝子の関与が示唆された。また、TGF-βは高分子量HA酸の産生を誘導することから、HAの断片化に伴う軟骨破壊の阻害剤として有効であり、臨床応用の可能性が強く示唆された。
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