研究分担者 |
石黒 直隆 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教授 (00109521)
南川 雅男 北海道大学, 理学部, 教授 (10250507)
西谷 大 国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 助教授 (50218161)
新美 倫子 名古屋大学, 博物館, 助教授 (10262065)
本郷 一美 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (20303919)
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研究概要 |
この科学研究費における今年度の主題は,内蒙古自治区赤峰市の興隆窪(こうりゅうわ)遺跡(紀元前約5000〜6000年)出土イノシシ類が家畜ブタであるかどうかを検討することであった。そこで,中国社会科学院考古研究所の自然センターに保管されている興隆窪遺跡のイノシシ類の上下顎歯の大きさを計測し,定量的な分析をおこなった。これらの資料がブタかイノシシかを判別するために,ヤンシャオ文化期前期(紀元前約4000年)の内蒙古自治区石虎山遺跡(紀元前約4000年),および商代(紀元前約1500年)の河南省安陽市花園庄(かえんしょう)遺跡の2遺跡との比較をおこなった。 家畜化のメルクマールとして広く用いられる下顎第3後臼歯の近遠心径と頬舌径についてまず検討をおこない,つぎにより遺伝的に安定していると考えられる第2後臼歯の第1咬頭対頬舌径および第2咬頭対頬舌径について検討をおこなった。 その結果,第3後臼歯の検討では,時代の最も古い興隆窪遺跡のイノシシ類が大きく,ついで,石虎山遺跡・花園庄遺跡の順に小さかった。一見,時代が下るにしたがって歯の大きさに縮小が認められようにみえる。ただし,花園庄遺跡と石虎山遺跡のイノシシ類の大半が飼育されたブタと報告されている。それらのことから,興隆窪遺跡のイノシシ類は,第3後臼歯の大きさをみる限り、その大半が野生のイノシシ類であると推測される。 つぎに,第2後臼歯では、興隆窪遺跡と石虎山遺跡の重なりがより顕著である点において差異が認められた。つまり,興隆窪遺跡のイノシシ類が示す大きさの分布域は広い傾向があると言える。したがって、興隆窪遺跡の計測値の下限を示す個体群は家畜化されたブタである可能性がある。このブタは、現在のところ中国北部で最古のブタである。
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