配分額 *注記 |
13,300千円 (直接経費: 13,300千円)
2006年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2005年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
2004年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
2003年度: 3,900千円 (直接経費: 3,900千円)
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研究概要 |
本研究は、分子系統解析技術を用いて東アジアと南米に隔離分布するうどんこ病菌の成立要因を明らかにするとともに,うどんこ病菌の進化を生物地理学的観点から明らかにすることを目的に行った.以下に本研究で得られた主要な成果を概説する. 1.アルゼンチン・パタゴニアで発見されたErysiphe属Uncinula節の新種を記載した。ナンキョクブナの一雑種Nothofagus antarcticaの葉で発見されたErysiphe patagoniaca sp.nov.はE.nothofagiとE.kenjianaに似ているが、付属糸全体がコイル状に巻く特徴および付属糸、子のう、子のう胞子の数が異なる。 2.5.8S,18Sおよび28S rDNAの塩基配列を使ってウドンコカビ目内におけるUncinula forestalisの系統的位置を推定した.本菌の閉子嚢殻の付属糸は先端が巻くUncinulaタイプであるが,Uncinulaが所属するPseudoidiumクレードとは遠縁で,また最近祖先的な属として記載されたParauncinula属とも明らかに異なった.Uncinula forestalisは祖先的な木本寄生性の菌で,Uncinulaタイプの先端が巻く付属糸と6-8個の子嚢胞子を持つ点からも祖先的形態を有する.以上の結果より,本菌に新属Caespitothecaを提唱した. 3.Golovinomyces属はうどんこ病菌の中で厳密な草本寄生性の属である.最近の分子系統解析により,Golovinomyces属とキク科との間に共分化の関係があることが報告された.キク科はもともと南米が起源地であり,後に北半球に分布を拡大した.もしGolovinomyces属とキク科との間の共分化の関係が南米にまで遡れるとしたら,Golovinomyces属の起源地も南米と考えられよう.そこで,南米におけるキク科の固有の連であるMutisia連植物に寄生するうどんこ病菌を採集し,rDNAの塩基配列を決定した.その結果,Mutisia連植物から分離したOidium m utisiaeおよびGolovinomyces leuceriaeはGolovinomyces属の系統樹の基部には位置せず,北半球で採集されたGolovinomyces属の二つのクレード内に分かれて位置した.したがって,Mutisia連植物はGolovinomyces属の最も初期の宿主とは言えなかった.おそらくGolovinomyces属の起源地は南米ではなく,北半球であろう.
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