配分額 *注記 |
14,100千円 (直接経費: 14,100千円)
2006年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
2005年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2004年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2003年度: 5,200千円 (直接経費: 5,200千円)
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研究概要 |
本研究は,東南アジア熱帯雨林に自生するラン科植物とBactrocera属ミバエとの受粉を介した共進化過程を化学生態学的見地から明らかにすることを目的としている.熱帯果実の重要害虫であるミカンコミバエやウリミバエなどの、Bactrocera属ミバエ雄成虫はメチルオイゲノールやラズベリーケトンなど特定のフェニルプロパノイド系香辛成分に強く誘引される.この現象の生物学的意義を追究したした結果,[1]野生の雄ミバエは花などの精油分泌組織から"スパイス成分"を積極的に摂取し,雌を誘引する性フェロモン合成原料として利用していること,[2]ミバエ虫体に多量に蓄積した花香由来物質は天敵に対して防御効果があること,[3]ミバエ類の原産地では,雄ミバエが特定の植物の花粉媒介に関与していること,などの事実が明らかになった.とくに[3]に関して,「ミバエラン」ともいうべきBulbophyllum属のラン科植物の花は,強力なミバエ誘引物質を産生し,特殊化したトラップ型花唇構造を発達させて特定のミバエ種を誘引する.誘引成分と構造の関係,自然生態系におけるランとミバエ雄個体群の種対応関係,花粉授受のプロセス,受粉効率などについて詳細に調査を進めた.東南アジア熱帯雨林地域に自生するBulbophyllum cheiri, B.apertum,B.vinaceum, B.baileyiなど数種のミバエランの花香成分である一連のフェニルプロパノイド類の化学分析と授粉プロセスの解析を中心に研究を実施した.その結果,これまで知られていなかった化学成分を解明するとともに,ミバエ類との送粉共生を仲立ちするシノモン(synomone)としての生態学的意義を明らかにすることができた.熱帯果実の重要害虫であるミバエ種が多く関与していること,これまで知られていなかった未知誘引物質が含まれていることから,本研究は,(1)送粉を介した昆虫と植物の共進化過程の解明にとどまらず,(2)防除困難なミバエ類の行動制御の新技術開発に寄与するものと期待される.また,(3)熱帯生態系を深く理解し保全する上にも重要な意味を持つものと考えられる.
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