研究概要 |
本研究は,中国雲南省において現在でも用いられている少数民族薬について,その原植物,利用部位,利用方法,利用目的(病気等),およびその民族薬に関する諸情報の収集と,収集された材料の解析を進めることによるそれら薬物の有効利用を目的としている。15年度は雲南省東南部(金平,文山周辺),16年度は雲南省西部保山市・臨滄地区および思茅地区,17年度は雲南省南西西双版納俸族自治州および思茅地区西部において調査を展開した。調査方法として1.少数民族の多く居住する集落に赴き,そこで開催されるバザール(交易会)や市場において販売されている民族薬について,販売人に直接インタビューしてその来歴や使用方法,使用目的に関する情報を収集した。2.少数民族居住地域の民間医を尋ね,彼らが使用する薬物について直接インタビューしてその使用方法,使用目的に関する情報を収集した。入手可能な薬物に関してはいずれの場合も標本とし,中国科学院昆明植物研究所で起原の同定を行った。 3回の調査で得られた伝承薬,民族薬の情報は合計797種で,そのうち520種については植物または動物種の同定が終了した。3回の調査で対象とした民族はタイ族,ラフ族,ハニ族,イ族,ミャオ族,ヤオ族,ペー族,プーラン族,ワ族,チノ族で,それ以外に漢族の民間薬に関しても情報を得ることができた。薬用植物の中には異なる民族間で使用されているものも多く見られ,その使用目的は同一であるとは限らないことがわかった。また,いくつかの民族では複方として利用しているケースがあり,民間医療が継承されている実例として興味深い。また,治療対象となる疾病にはリウマチ,肝炎,眼病,肺結核と多岐にわたっている。 今回得られた情報に関しては動画記録として保管しており,また,写真を徳島大学薬学部,さく葉標本および生薬標本を中国科学院昆明植物研究所にて保管している。
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