研究概要 |
qを素数の冪として,q^2元体Fを考える.F上の射影平面内で非斉次方程式y^q+y=x^<q+1>で定義された曲線をHermitian曲線とよぶ.この曲線はq^3+1個の有理点を持ち,その値はWeilの評価式の丁度上限である.言い換えれば,望みうる最大個数の有理点を持つ.加えて,この曲線は強い対称性を持つことより,良い代数曲線符号を構成するために最も有望視されているもののひとつである.この曲線上の1点符号については,Stichtenothにより次元が,Yang-Kumarにより最小距離が,決定されていたが,そのような問題意識で2点符号について考えることが本研究のひとつの目標であった.第1年度においては,問題のreductionと,次元の計算および簡単な場合の最小距離の考察を行った.第2年度は,2点符号の最小距離の完全決定を追求し,幸運にも,全ての2点符号についてそれらの最小距離を決定することができた.最小距離が設計距離に一致するような2点符号を調べるに際しては,それら固定した2点各々でHermitian曲線と2重接触するような2次曲線の族を詳細に研究することが必要であった.この部分にもHermitian曲線の自己同型と2次曲線族との関連などの新しい知見を含んでいる.(この2次曲線の幾何の部分は基礎体の標数が2の場合とそれ以外の場合では様相を異にする.)1点符号を真に凌駕する2点符号の最小距離の決定には,Yang-Kumarが1点符号の最小距離決定の際用いた手法を,より精密化した形で用いた.また,かつてWeierstrass Pairを用いた2点符号の理論を展開した際にHermitian曲線上でΩ構成法により構成した例について,その時点では最小距離が(期待通り大きくなる事は分かっていたものの)下からの評価を与えただけであったが,今回の結果の応用としてその評価式の等号が成立することが判明した.
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