研究概要 |
本研究では実用性,特に開発現場への導入の容易さを重視した,ソフトウェア最終品質の推定モデルの開発を追求した.特に実用性を考えた上で次の3点に特に配慮して研究を行った. 1.推定を行うタイミングに注目する.遅くともテスト工程が始まる時点で推定が行えることを目指す. 2.使用する時系列データは開発現場で容易に収集可能であり,推定モデルの適用もできる限り分かりやすいものとする. 3.推定結果をソフトウェア開発プロセスの改善につなげることにも挑戦する. これを踏まえ,本研究では次に示す3つのサブテーマを実施している. [S1:]設計・コーディング工程でのメトリクスデータを利用した最終品質の推定と改善 まず,コーディング工程からのデータ収集に基づいて,最終品質の推定と改善手法を提案した.具体的には発券された不具合数の時間的な推移を開発フェーズごとに記録したデータから,プロジェクトを4つにクラス分けし,各クラスでの最終品質を推定する手法を提案した. [S2:]開発計画の妥当性や開発計画からのずれの大小を利用した最終品質の推定 S1の結果をふまえ,設計開始時点でのデータを取り入れることで,さらなる精度向上を目指した.具体的にはベイジアンネットワークを用いて開発の進行に影響を与える要因をモデル化し,最終品質の良し悪しを確率的に推定する手法を提案した. [S3:]プロジェクトシミュレータを利用した最終品質改善手法の提案 最後に,開発プロセスの進行に応じて変化するリスク要因をモデル化し,各段階でのプロジェクトの品質を評価する手法を提案した.この手法では,開発のフェーズごとにベイズ識別器を用いることでプロジェクトの最終品質の良し悪しを評価できる.本手法を用いることで,開発の途中からでもリスク要因の変動を試験的に入力することで,開発終盤のプロジェクト品質を予測可能になることを確認した.
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