研究概要 |
動画像の毎秒当りの伝送ビットレートは,フレーム1枚当りの平均ビット量(BPF)と1秒当りのフレーム数(FPS)の積で与えられるため,伝送ビットレート一定の下では両者はトレードオフの関係にある.従って,限られた帯域の中で動画像を伝送する際にはFPSとBPFをバランス良く削減する必要があり,従来のように一方のみを優先した制御法と比較した場合,その主観評価値を大きく改善できる.研究代表者は過去にこの問題を積極的に考察し,与えられた動画像と伝送ビットレートに対して主観評価画質を最大化する最適FPSおよびBPFを推定する基礎的手法を提案してきた.本研究は,この手法を実際の動画像に適用するためのアルゴリズムを構築すると共に,実際の動画像符号化器(変換符号化器)として実装し,その評価を行うことを目的とする. まず,前述の最適FPS推定に関する基礎的手法は,単一シーンからなる1秒程度のフレーム列に対して有効であることは既に確認されている一方,実際の動画像は様々な動きやフレーム内アクティビティを持つ多くのシーンから構成されているため,当該手法を実動画像に適用するためには,時間的に変化する最適FPSの推定法やシーンの扱いなどに関する拡張が必要である.そこで,いくつかの試験画像を用いて主観評価実験を行い,当該手法の実画像への適用方法を検討した.また,対象動画像を定ビットレートで符号化するためのレート制御方法を検討し,FPSが時間的に変化する場合の定ビットレート制御アルゴリズムを構築した. さらに,得られたアルゴリズムをMPEG4規格に基づく動画像変換符号化器(トランスコーダ)として実装し,対象原MPEG4画像とビットレートが与えられた場合,動画像の瞬時的な特徴量を用いて最適FPSを推定し,その下でレート変換を行う変換符号化器を実装した.また,得られた変換符号化器を用いて種々の画像を符号化すると共に,主観評価実験によって従来の固定FPS方式と比較し,提案手法の有効性を確認した.
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