研究概要 |
まず,劣化画像復元法を応用したJPEG画像における画質劣化の低減の理論研究を行い,離散ブロックコサイン変換領域でのJPEG画像と鮮明化画像との量子化誤差を考慮した誤差評価と,エッジの位置と方向性を考慮した空間領域での鮮明化画像のなめらかさの評価とを取り入れた鮮明化画像に対する評価値の最適化問題として,鮮明化を定式化しました.具体的な鮮明化処理としては,その最適にすべき評価関数の最大値を,反復処理を用いて探索することになります.その定式化に基づいて,計算機実験を行い,定量的な評価としては,Lena画像(256x256画素,8bit)に対して,さまざまなビットレートで,PSNRとして0.6〜0.8[dB]程度の改善が行えることを確認しました.定性的な評価としては,低ビットレート時に発生するブロッキング・アーティファクトやモスキート・ノイズを,エッジの過剰な平滑化を行うことなく,低減できることがわかりました. つぎに,JPEG画像の画質改善の研究で得た改善画像の評価基準を元に,従来の焦点ずれ画像の劣化過程との対応から,焦点ずれJPEG画像に対する改善画像の評価基準を導出し,その評価基準を最小化することによる鮮明化アルゴリズムを導きました.その改善画像の評価基準では,エッジの位置および方向,画像の階調の変化の度合いを表す駆動白色雑音の局所的な分散を考慮しています.また,最小化処理は,共役勾配法を適用することにより,実現しました.この鮮明化アルゴリズムを,計算機シミュレーションで作成した焦点ずれJPEG画像に適用し,焦点ずれJPEG画像の鮮明化が行えることを確認しました.具体的には,Lena(256x256画素,8bit)に対して,焦点ずれ半径R=2.5で焦点ずれを起こさせ,0.509[bpp]のJPEG符号化を行ったJPEG画像が鮮明になることを確認しました.
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