研究概要 |
自然進化がこの地球上に生物の繁栄をもたらした自然進化をメタファとした方法論を用いて人工物を設計しようとする人工生命パラダイムは,1990年代の一大ブームの後,近年になって,やっと本来の落ち着きを取り戻したといえる.この人工生命パラダイムの発信源であったLangtonの主張に直結する分野として,現在,計算機シミュレーション世界から実世界に移し込むための基幹領域に,自律ロボットの制御機構を人工進化により設計しようとする進化ロボティクスがある.研究代表者は,この分野には,永続的人工進化論と社会性自律群ロボット論の二つの重要課題の解決が必須であると主張している.本研究では,これらの理論的枠組を構築するとともに,自律ロボット実機群とその進化型計算向けグリッド計算システムを製作して検証することを目的とした. 第一の主要課題は永続的人工進化論の構築であった.これに関し,(1)ニュートラルネットワーク説による人工進化理論に基づき,標準遺伝的アルゴリズムのパラメータ・チューニングを行った.(2)進化ロボティクスの問題では,ニュートラルネットワークの含有度だけでなく凸凹度も重要な問題の難易度を示す因子であり,問題の難易度をその一つを独立に議論することは実際困難で,ニュートラルネットワーク含有度と凸凹度の二つの指標から問題が持つ難易度を表現できる可能性を示した.第二の主要課題は,社会性自律群ロボット論の構築であった.これに関し,均質な自律移動群ロボットシステムから非均質へものへと機能分化していく進化型人工神経回路網を提案した.第三の主要課題は,グリッド進化計算環境の構築であった.これに関し,研究室で稼働中の計算機群を用いて進化計算の負荷分担を平準化するためのモニタリングサービスを開発しその有効性を検証した.
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