研究概要 |
本研究では,時間-周波数解析による脳波信号の解析から時間,周波数およびパワースペクトルの3次元分布を求め,そこから特徴量を抽出することで異常診断および感性評価を試みた。また,α波の伝播挙動の解明に関して,α波のモデル方程式導出を試みた。以下に具体的な内容を示す。 1.脳波データのウェーブレット変換による痴呆診断 これまでの研究からウェーブレット解析を用いた場合,2種類の波形の違いを定性的・定量的に判断できる可能性を示した。具体的には実信号ウェーブレット解析を提案し,痴呆診断およびてんかん脳波解析に適用して定性的及び定量的な診断の可能性を示した。 2.音楽刺激下での脳波の時間-周波数解析による快・不快評価 本研究では人の快と不快に関する感性評価システムの構築を試みた。具体的には快音と不快音を被験者へ提示して得られた脳波データの時間-周波数解析から快・不快評価を試みた。解析手順は脳波データを時間-周波数解析法の一つである短時間フーリエ変換で解析し、得られたパワースペクトルからそれぞれの時刻のθ波,α波,β波などのエネルギーの割合を求め,その割合の時間変動により快・不快評価を行う。その結果、θ波、α波、β波の時間的なパワースペクトル比の変動を見ることで快音と不快音の試聴中での脳波の変動が異なることがわかった。これより,リラクゼーション効果や不快度評価のモニタリングおよび定性的評価の可能を示すことができた。 3.α波の伝播挙動の解明 α波の漸増-漸減現象,起源,伝播特性などの効果を含んだモデル非線形偏微分方程式を導き,数値シミュレーションすることで感性情報の伝播原理の解明を試み,実測されたα波との比較によりモデルの妥当性を評価することを試みた。当該研究期間ではα波モデル構築のための資料収集と既存モデルでの数値シミュレーションを行った。
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