研究概要 |
急速な情報化にさらされ変革を迫られている公共図書館サービスの将来展開を検討するため,地域住民の評価(効用)関数を推定する方法について検討・検証した.大きく分けて三つの研究を行った.第一の研究では公共図書館内におけるインターネットサービスに焦点をあて,茨城県立図書館の来館者450名を対象にACA(Adaptive Conjoint Analysis)調査を実施した.第二の研究はつくば市の住民を対象に,公共図書館サービス全般に関する6つのサービス要素を評価するCBC(Choice Based Conjoint)調査を行い,その結果を分析した.第三の研究は,前年の結果をもとに成田市の住民に対して同様の調査を行った.本研究の結論は以下のとおりである. 1)インターネットサービスに関する選好意識は,回答者のインターネットに関するスキルによって変化し,初心者は職員からの援助を,上級者はアクセス制限の解除を評価すること,プライバシーの確保が共通の要求であることを示した. 2)つくば市の調査からは,図書館利用者と非利用者の間で,レファレンスサービスや館内の滞在環境に対する評価がやや異なるものの,おおむね類似した選好意識であることが示された.基本的な社会経済変数や図書館の利用傾向で類型化しても,選好意識に明白な相違が現れないことが明らかとなった. 3)成田市の住民を対象として,ベイズ推定法による個人別選好意識の推定を行った.図書館サービスに対する選好意識は,仕事利用型,読書利用型,生活利用型の三つに類型化できることを示した.また,書籍やテレビなど伝統的メディア利用は選好意識に有意な差をもたらさないが,インターネットの利用は仕事利用型と類似した性向をもたらすことを示した.
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