研究概要 |
高齢者ユーザによるIT機器利用時のエラー反復現象のメカニズムを明らかにするため,4つの選択肢の中にルアー項目,すなわち「特にターゲットと関連性が高いダミー項目(具体的には同音異義語)」を含む漢字選択課題を開発し,実験室における課題でエラー反復現象が観察されるか否かを実験的に検討した.大学生ならびに高齢者(健康な65歳以上)の参加を得て検討した結果,4選択肢を直線状に並べた課題状況では,エラー反復は見られなかったが,ルアー項目とターゲット項目の物理的位置関係によって反応が異なることから,若年層・高齢者層のいずれの群においてもルアー項目とターゲット項目を経時的に比較する系列的処理をおこなっていることが,正答率,反応時間,視線分析から明らかになった.また,強制的な系列処理条件(ISI200ms条件)での検討から,基本的な結果は年齢群間で等しいが,反応時間における効果の現れ方などに高齢者群のみに得らる結果がみられ,年齢群を通じての共通性と相違を示した. そこで,系列的処理を困難にするために空間的なランダム性を加え,また彩色による刺激の顕在性を加えた選択肢提示条件下で実験を行った処,エラーの反復が観測されるようになり,さらに大学生に二重課題による注意分割実験を行ったところ,多くのエラー反復が生起し,またその場合には刺激顕在性が有意な効果を示した. これらの結果を二重過程仮説の下で考察すると,エラー反復現象を自動的な過程の促進よりも課題の複雑度や注意機能による「意識的制御過程の弱まり」によって引き起こされる可能性が示唆された.エラー反復を防止するためのデザイン原理について今後検討を行っていく.
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