研究課題/領域番号 |
15500176
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
認知科学
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研究機関 | 北里大学 (2005-2006) (財)東京都高齢者研究・福祉振興財団 (2003-2004) |
研究代表者 |
伏見 貴夫 北里大学, 医療衛生学部, 助教授 (60260303)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2006年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2005年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2004年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2003年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | 動詞活用 / 規則と辞書 / 単一システム仮説 / 二重システム仮説 / 健常成人 / 失語 / 意味痴呆 / ニューラル・ネットワーク / 2重システム仮説 / 五段活用 / 一段活用 / 単一システムと二重システム / 五段活用と一段活用 / 失語症 |
研究概要 |
言語の運用には新規な文の生成理解を可能にする文法規則、事物と名称の恣意的関係を記憶した辞書的知識が必要である。一般的に規則は文、辞書は語の生成・理解に関与するといわれるが、語の文法ともいえる動詞活用においても規則や辞書の働きが検討できる。英語動詞には規則動詞(bake→baked)と不規則動詞(make→made)があり、活用の背景に規則システム、辞書システムといった処理様式の異なるふたつのシステムを想定する二重システム仮説が提言されている。これに対し近年、並列分散処理型モデルを基調とする単一システム仮説が提案され、多くの論争が引き起こされている。本研究の目的は、二重システム仮説、単一システム仮説の観点から、日本語動詞の活用メカニズムを明らかにすることである。 日本語動詞には五段(例.かげる)、一段(かける)、変格(する、くる、あいする)という活用型があり、五段は「かげらない、かげります、かげった」、一段は「かけない、かけます、かけた」のように活用形パターンが異なる。五段動詞の数は全体の67%を占め、一段動詞(31%)、変格動詞(2%)を上回るため、二重システム仮説に基づき五段動詞を規則動詞、それ以外を不規則動詞と捉えれば、五段動詞より一段動詞の活用は困難であると予測される。一方、類似する動詞の影響を想定する単一システム仮説に基づけば、一段動詞と同じ語末を持たない「かわす」などの一貫五段動詞より、一段動詞「かける」と似ている「かげる」などの非一貫五段動詞の活用が困難であると予測される。 本研究では(A)健常成人を対象として活用の難度は一貫五段動詞<非一貫五段動詞<一段動詞の順で上昇すること、「にわす、にける」などの新造動詞では、妥当な活用の生起率は80%、五段、一段活用が適用された率はそれぞれ75%、5%で五段動詞が英語の規則動詞に相当することが示された。これら結果は五段活用は規則により、一段活用は辞書により生成されるという二重システム仮説と整合するようにみえるが、単一システム仮説に基づくニューラル・ネッットワーク・モデルによってもこの傾向は再現されることが判明した。また(B)脳損傷・萎縮例を対象として五段動詞と一段動詞の活用成績に二重乖離を示した意味痴呆4(成績が五段>一段<新造)と失語2例(五段<一段>新造)を見出した。意味痴呆では辞書に障害があり、失語では規則に障害があるとすればこれらの乖離は二重システム仮説で説明できるが、音韻⇔意味からなる単一システムモデルでは意味痴呆に意味障害、失語に音韻障害を仮定すれば上記の乖離が説明できるとする説もある
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