研究概要 |
本研究は,「不完全多変量データから個人差を最大とする合成得点を解析的に求める方法」として具体化されたモデル(柴山(2000))を多次元に拡張し,欠測値を含む多変量データの分析方法として実用に供することを目的とするものである.上記のモデルは,科目選択が許される大学入試データに基づき,選択科目による有利不利をなるべく小さくしながら,個人差を最大限に識別できる合成変量を導くことを主眼としているため合成変量の次元は一次元にとどまっている. しかしながら,この方法が本質的には多変量分散分析の事後分析としての正準判別分析(重判別分析,正準分析)を用いることと同等であるため,多次元への拡張は極めて自然に導ける.その一方で,正準判別分析において判別すべきものが群間差であるのに対し,この方法では各個人それぞれをいわば群とみなして判別することを目的としている.そのため,通常の正準判別分析プログラムでは計算が事実上できない. そこで本研究では,Shibayama(1995)のモデルが,1)ANOVAモデルによる定式化と,2)最小2乗基準による定式化,の2つの別々のアプローチにより得られるものであることを利用して,多次元への拡張は1)による定式化の自然な発展として,また,その計算アルゴリズムは2)の定式化によるものとして,欠測値を含む不完全多変量データの縮約記述のための新しい分析方法を開発し,シミュレーションによってその性質を調べた.
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