研究課題
基盤研究(C)
本研究では、骨髄由来血管内皮前駆細胞(EPC)の未梢血管に接着・遊走するのに必要な分子機構を明らかにし、その生体材料としての有用性を向上することを目的としている。研究初年度においては、まず未梢血単核球分画から実験に必要とされるEPCの培養を確立した。その後、7日間培養を続けたEPCを用いて、既存の成熟血管としてヒト臍帯静脈由来内皮細胞の単層カルチャーとの接着状況を観察した。観察に際しては、生体と同じ流速の存在下でリアルタイム計測を用いた。その結果、EPCは未刺激の血管内皮細胞にはほとんど接着をしないこと、それと対照的にサイトカインで刺激した血管内皮細胞には著明に接着をすること、そしてこのサイトカインの刺激は4時間がピークであることを次々に明らかにした。さらに、このEPCの接着現象は、血管内皮細胞接着分子であるE-selectinの抗体でブロックされるが、ICAM-1やVCAM-1の抗体ではブロックができず、E-selectinの関与が強く示唆された。研究2年目においては、初年度の知見を発展させ、マウス下肢虚血モデルを作成し、E-selectin遺伝子cDNAを組み換えアデノウイルスベクターに導入による前駆細胞の遊走および血管新生における役割を調べた。その結果、E-selectin遺伝子過剰発現群ではコントロール群に比べて血管新生の増強が確認でき、実際の虚血部分の血流が改善することが明らかになった。この実験では通常の血管新生実験に用いられる前駆細胞数に比して2割程度の細胞しかしようしておらず、効率よく血管新生が誘導できることが示唆された。今回の一連の研究は今後の再生治療におけるE-selectin遺伝子の重要性を考えるうえで極めて大変意義深い。
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