研究課題
基盤研究(C)
ドラッグデリバリー担体等の医用バイオマテリアル(生体材料)を開発することは重要である。中でもコラーゲンは体温でゲルを形成し、そのゲルが強い保水性および薬品のゲル内保持性を示すことから、これまでウシ由来コラーゲンが薬剤の安定化剤および止血用膜、人口皮膚、歯根膜などの医薬品に用いられてきた。しかし、このウシコラーゲンは狂牛病の原因物質プリオンの混入の危険性が有り、またアナフィラキシーの原因アレルゲンであることが判明し、安全な医用生体材料の応用のために、ヒト由来コラーゲンの作成が重要な課題となった。申請者らはin vitroでヒトI型コラーゲンα1鎖ホモトリマー{α1(I)_3}分子の作成を目指す研究を遂行し、以下の成果が得られた。1.ヒトコラーゲンI型α1鎖の作成:α1鎖cDNA(コラーゲンドメイン、3.2kbp)をin vitro translation用ベクターpIVEX2.3(E.Coli系),pIVEXWG1.3(wheat germ系)に組込みタンパク発現を調べたが、いずれも収量が低く、不溶性画分に回収された。今後近年開発されたバクテリア発現タンパク分泌系で大量産生を検討する。2.ゲルの薬剤担体としての有効性:血管新生阻害因子エンドスタチン(20KDa)はリュウマチモデルマウスの関節炎阻害に有効であり、本ゲル担体への応用が可能となった(山口典子博士)。3.担癌動物のゲル投与系の確立:癌細胞をマウスに移植する際、癌細胞のキャリアーとしてマトリゲル(基底膜成分)または天然I型コラーゲンを用いた場合、前者は癌細胞の増殖促進を示したのに比し、後者はむしろ癌細胞の増殖抑制効果があった(論文投稿中、久保田俊一郎教授)。このI型コラーゲンα1鎖ホモトリマー{α1(I)_3}分子にも当初の目的のドラッグデリバリー担体のみならず、癌細胞増殖抑制効果が期待されている。
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