研究概要 |
超音波診断装置によって生体から得られるRF(Radio Frequency)エコー信号を用いて,肝硬変や肝炎などのびまん性肝疾患の定量診断法を実現することを目的とし,研究を行った. RFエコー信号から統計的な処理を用いて病変組織と思われる部位からの信号成分のみを抽出する処理法を提案し,コンピュータシミュレーションなどを用いて検証し,実際の生体組織構造と本研究で提案する処理法で得られる結果とを比較検討し,処理の妥当性を確認した上で,実際の臨床現場での応用に発展させることを検討した. 研究協力先の医院において,合計8例の肝硬変肝臓の剖検肝試料を対象とし計測を行った.各々の試料を脱気水入りの水槽中に固定し,精密移動テーブルに取り付けた探触子を肝臓の厚み方向にスライドさせ,送信2.0MHz,受信4.0MHzの超音波を用いて0.1mm間隔で100フレーム分のRFエコー信号を連続的に収集した.さらに,計測を行った肝臓から一部を切り出し,1mm間隔で20枚の病理写真を作成した。病理写真は線維組織を青く染色する処理が施されている. 各々の剖検肝試料のRFエコー信号において,本研究で提案する信号処理を施し,特異な信号成分のみを抽出し,それらの抽出結果から3次元データを構築した.また,病理写真から線維組織の構造を色差を利用して抽出し,線維組織の3次元データを構築した両者の3次元データについて,空間的な抽出率および構造の類似性について比較したところ,どの症例においても高い相関が認められ,線維組織抽出処理が有効性であることが実証された.
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