研究分担者 |
伊藤 秀美 東北大学, 大学院・歯学研究科, 講師 (50005104)
森川 秀広 東北大学, 大学院・歯学研究科, 助手 (60302155)
今泉 敏 広島県立保健福祉大学, 教授 (80122018)
坂本 幸 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (40004113)
為川 雄二 東北大学, 教育情報学研究所, 助手 (30351969)
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研究概要 |
本研究は,近年高齢化に伴って増加の一途をたどっている機能獲得後に陥る脳卒中などの神経・筋系疾患や舌癌などの口腔癌による高齢者・中途障害患者に対するパラトグラムを用いた治療方法のシステム化とスピーチ・リハビリテーションを主とした社会復帰のためのプログラムの確立をめざし計画した. 研究内容は,1)発語だけでなく摂食・嚥下に関しても障害をもつ舌を半側以上切除した患者を対象に,(1)考案した標準的な/アタ/・/アキ/・/アカ/の3つのパラトグラムを用いて形態形成した舌接触口蓋床義歯を作製し,その義歯の有効性を摂食・嚥下機能との関係,及び粉末式と電気的パラトグラムによる舌の調音と口蓋部形態や聴覚印象との関係から比較・分析する.(2)舌接触口蓋床義歯装着後,5年以上経過している患者を対象に再度,パラトグラムを用いた方法により上顎義歯を作製し,それぞれの口蓋部の形態や残存舌の調音に関して比較・検討する.2)日常生活に支障が少ない舌部分切除患者を対象に,舌部分切除による調音と口蓋形態との関係を分析し,聴覚的に/アタ/・/アキ/・/アカ/が正常に聞こえる範囲内でのパラトグラムの特徴を明らかすることである. その結果,以下のことが明らかとなった.1)舌を半側以上切除した患者に装着した口蓋床義歯の口蓋部形態は左右の非対称的形態に加えて,すり鉢状の形態を示した者も見られた.2)舌を半側以上切除した患者で,5年以上経過後に新たに装着した義歯口蓋部の形態は,最初の義歯口蓋部の形態と比較して,相対的に口蓋部が厚くなる傾向が観察された.3)咽頭部付近まで口蓋床義歯を延長することによりカ行音が改善した.4)摂食・嚥下障害の改善に口腔に装着した口蓋床義歯が有効であった.5)舌部分切除患者では,左右の非対称性を示すパラトグラムが多く,それらは口蓋形態と良く対応していた. 従って,嚥下障害などの機能障害に対して口腔部の役割が大きいこと,またパラトグラムによる訓練評価法が有効であることが認められた.
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