研究概要 |
遠心性収縮運動による運動療法が骨格筋の回復過程に与える影響を調べた.ウイスター雄ラットに2週間の後肢懸垂を課し廃用性筋萎縮を惹起させた.引き続いて,トレッドミル水平走行負荷群(H群)には1日60分の水平走行を5日間,下方走行負荷群(D群)には1日60分の下方走行を5日間,および走行なし群(C群)には5日間の通常飼育を行い,各群ともにケージ内での行動を観察した.致死量のネンブタールを投与して安楽死後,ヒラメ筋試料を採取して組織学的に検索した。その結果,組織学的には,D群,C群の一部の個体に,少数の質へのマクロファージ浸潤像および中心核像が認められた.筋断面積は,H群で1822.5±311.76μm2,D群で1731.3±164.06μm2,C群で2120.4±554.34μm2,S群で1619.6±297.91μm2であり,群間に有意差はなかった.0.24mm2あたりの筋線維数は,H群で83.5±8.23個,D群で73.8±9.91個,C群で73.0±17.05個,S群で84.3±10.50個であり,群間に有意差はなかった.筋線維あたりの周辺核の数は,H群で1.8±0.26個,D群で1.8±0.30個,C群で2.5±0.28個,S群で1.7±0.29個であり,他の3群に比してC群で有意に多かった(p<0.05).この組織学的検索から,運動を負荷された群は通常飼育群より筋核が少なく,運動負荷は筋線維の再生過程に何らかの影響を与えることが示された.行動観察からは,運動を負荷されたD群およびH群では,C群より運動機能の回復が早期から開始される傾向が見られた.
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