研究概要 |
15年度は,ナゾメータを用いた日本語発話の鼻音性異常度判定に用いる検査用語句ついて,その妥当性を検討した。その結果,5母音及び破裂音(p, t, k),摩擦音(s,∫),破擦子音(t∫),鼻子音(m, n)を含む計20音節,堤ら(1999)の作成した15文の採用が適当と考えられた。 16年度は,この検査用語句のナゾメータによる測定と並行して,長文「ジャックと豆の木」と「北風と太陽」について検索し,英語の長文Rainbow Passageよりやや低い平均Nasalance値,それぞれ33.6±6.8%,28.3±6.0%を得た。その結果,検査用例文としては「北風と太陽」の冒頭部(194文字,224モーラ)を用いることとした。 17年度は,選定した検査用語句及び例文について,中国方言話者の青年期男性17名(平均20.3歳)及び女性18名(平均20.7歳)に協力を求め,平均Nasalance値と標準偏差を測定した。その結果,平均Nasalance値は,従来よりやや高値となり,女性の平均Nasalance値は男性より高い傾向がみられた。特に,後続母音が/a/の音節では,鼻音を除き,破裂音,摩擦音のいずれも女性の平均Nasalance値が男性より高かった。 さらに,平田ら(2002)の母音と半母音で構成した短文(上を覆う,用意は多い)及び閉鎖性音飾で構成した短文(キツツキつつく,コツコツつくす>について平均Nasalance値を測定し、方言差について検討した。その結果,平均Nasalance値は,中国方言話者が近畿方言話者より高かった。 今回の検索結果を基準値としてThe MacKay-Kummer SNAP Testにならい,男女別日本語版鼻音性異常度判定検査法を試作した。今後,年齢,性別,方言に応じた鼻音性異常度評価基準を設定する必要性のあることが示唆された。
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