研究概要 |
対人サービスロボットがサービスを受ける人に優しい印象や何らかの感情を伝えることができる動作軌道の生成を目的とした.まず,3つの感情(平静,親しみ,怒り)に対応したものの差し出し動作の計測実験を行い,感情に付随する動作特徴を抽出した.つぎに動作特徴と動作印象との関係づけを行い,人間のコミュニケーション能力について考察した.日常動作のひとつである,「他人への物の差し出し」を研究対象として実験を行った.まず,人間の感情に付随して表れる動作特徴を抽出するために動作計測実験を行った.つぎに,動作計測実験の動作者映像に対する主観評価実験を実施し,動作特徴と動作印象とはどのような関係にあるか調べた.さらに,異なる文化的背景をもつ日本人,フランス人の2グループに対して同様の実験を行い比較した. 動作計測実験では平静,親しみ,怒りの各感情に対応した「人への物の差し出し」について計測を行った.動作解析の結果,動作の所要時間,物持ち上げと置く動作の所要時間比,高さ方向の最高変位,物を差し出す方向の最大速度,終端速度が動作者の感情に付随して現れる動作特徴である. 人間動作に対する主観評価実験から,親しみ,怒り印象はともに,終端速度と強く関係していることが明らかになった.感情の伝わる動作を生成するには,運動条件として,親しみ印象を与えたいときには,全体の動作速度をゆっくりにし,終端速度を小さく.怒りのときには,与えたい印象の強さによって,動作軌道が全く異なり,適度に怒り印象を与えたいときは,終端速度はさほど大きくないが,物を持ち上げる高さを低くし,直線的な動作軌道にする.強い怒り印象を与えたいときは,物を高く持ち上げ,叩きつけるように置く,終端速度の大きな動作を行う. ロボット動作に対する主観評価実験からは,感情が伝わりやすい2者間の位置関係で動作を行うことが,感情を伝えるためにはより効果的である.
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