研究概要 |
睡眠は生存のために欠くことのできない行動である.特に高度技術化社会をむかえ,生産活動や経済利益を重視するあまり,睡眠だけでなく休養自体を軽視する傾向が強まっており,自然に逆らった生活から生じたひずみのためにストレスや疲労が原因の病気が増加している. 本研究では,睡眠状態をモニタリングし,その状態に応じた最適な睡眠環境が提供できるシステムの開発を目指している.ところで,生体工学に関する分野で,近年1/fゆらぎに関する研究が盛んになりつつある.1/fゆらぎは両対数パワースペクトルの傾きが-0.5〜-1.5となる不規則な変動のことを指し,心拍間隔のゆらぎや脳波のα波の周波数ゆらぎなど,我々の生体現象にも1/fゆらぎがみられることが知られている.また,仮説として1/fゆらぎは人間に対して快い刺激となるといわれており,1/fゆらぎ刺激による快適性を評価する研究も行われている. そこで,本研究では,昨年度実施した寝床内温度をフィードバックし,寝床内温度の管理を行うことで,終夜に渡り寝床内温度を快適温度帯に保つ制御を行い,睡眠の質への影響を検討したことをもとに,1/fゆらぎを考慮した寝床内温度制御を行うことによって,睡眠の質にどのような影響をもたらすか比較検討を行った. 実験に際しては,快適温度帯と言われている32℃±1℃の範囲内で温度をゆらぎさせた.その結果,寝具内温度を一定に保った方が,温度をゆらがせるより睡眠指標が深くなることが明らかとなった.睡眠深度に応じて体温の調節方法は異なることが知られており,生理的な温度調節過程に一致しない温度調整はかえって睡眠の障害になることが想像された.
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