研究課題
基盤研究(C)
われわれは、これまでに熱ショックを含む各種物理刺激の効果を培養細胞とHAを用いて迅速に調べる方法を開発してきた。すなわち、マウス線維芽細胞を用い温熱刺激のような物理刺激を与えHAと混合培養すると3次元様増殖の形成が促進されることを見出した。平成15年度に温熱刺激の設定温度と処理時間による温熱量が3次元様増殖に及ぼす影響(温熱量の検討)について調べ、平成16年度は温熱刺激の処理時間を10分間に統一し、設定温度を40〜45℃の範囲について検討(適用量の検討)した。温熱量に関する実験の結果、温熱療法による治療効果を最大限に高めるためには設定温度と刺激時間との関連性から検討することが重要であることが明らかになった。つまり、3次元様増殖は温熱量を敏感に反映していた。次に適用量に関する実験の結果からは、細胞レベルにおける温熱効果の最小量と最適量を示すことが判明した。このことから細胞の増殖活性高めるための最適な温熱量の測定法として3次元様増殖形成の有用性が示唆された。この3次元様増殖のメカニズムについては、温熱刺激により細胞外環境の変化が閾値に達した結果、遺伝子発現が起こり、細胞外マトリックスが多量に合成されため形成されたのではないかと考え、これを証明するために次の実験を行った。組織化学的技法によりコラーゲン線維を特異的に染色し、細胞外マトリックスの形成を明らかにする実験を行った。またウエスタンブロット法によりリン酸化p38抗体を作用させリン酸化したp38MAPキナーゼ(p38 MAPK)を検出する実験を行った。さらに温熱刺激による細胞ダメージをサバイバルカーブ(細胞生存率対処理時間)として示す実験を行った。結論としては3次元様増殖形成が、温熱刺激の最適条件を示すパラメータになること、また、最適な温熱量を提示すものとして温熱療法の基礎になり、温熱療法の効果を細胞生物学的に示すための重要な知見になるものと考えられる。
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