研究概要 |
本研究では,筋力トレーニングに伴う同化ホルモンの分泌が筋適応に及ぼす長期的および短期的な影響を明らかにするために,まず,筋力トレーニングの運動後における同化ホルモンの分泌動態と筋肥大との関係(研究課題1)を2つの実験を通して検討した.また,筋力トレーニング運動後には活動筋において筋タンパク合成の亢進することが示されているが,血中における同化ホルモン濃度の増加は筋組織の修復促進に貢献し,結果的に筋機能の回復促進を引き起こすかもしれない.そこで,研究課題2では,筋力トレーニングの運動後における同化ホルモンの分泌動態と筋機能の回復動態との関係を検討した. 研究課題1では,長期トレーニングに伴う筋肥大の程度が明らかに異なる2種の負荷方法(最大筋力型・筋肥大型)に対する同化ホルモンの分泌動態を検討した結果,運動後における成長ホルモン濃度の増加量は,トレーニングによる筋肥大の程度と関連することが認められた(課題1-1).さらに,筋肥大型による筋力トレーニング運動であっても,各セットの動作反復中に短時間の休息を挟むことによって運動後に成長ホルモンの分泌増大はみられず,長期のトレーニングに後における筋肥大も大幅に抑制されることが認められた(課題1-2). 研究課題2では,筋力トレーニングの運動直後における成長ホルモンの分泌量の多寡は,その後の筋機能の回復様相に影響を及ぼす可能性のあることが認められた. 本研究の結果は,筋力トレーニングの運動直後における同化ホルモン,特に,成長ホルモンの分泌動態が長期のトレーニングに伴う筋肥大や活動筋における筋タンパク合成の亢進と関連する可能性を示唆するものである.したがって,筋量の増大をねらいとして筋力トレーニングを実施する際には,成長ホルモンの分泌増大を促すことがトレーニングの合理化を図る上で有効な手段であると考えられる.
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