研究概要 |
本研究では、大学生の暑熱時の体温調節特性を明らかにすること並びに効果的な冷却法の開発、暑熱反応に対する出身地域及びその生活環境との関連を考察すること、を目的とした。 得られた主な結果は、 1)暑熱下での短時間の運動間に活動部位である両脚を水に浸し,冷却を行うことが冷却後の運動時における呼吸循環反応に対してどのような影響を及ぼすかを検討した.その結果,運動間に行う短時間の脚部冷却により,冷却後の運動時において深部体温,心拍数,換気の上昇が抑えられた.このことは暑熱下における運動後の休息時に行う短時間の脚部冷却が,冷却後に行われる運動中の温熱負荷や呼吸循環系の負荷を軽減する可能性があることを示唆する. 2)学生16名において暑熱暴露実験を行い、その出身地、大学に入るまでのエアコンの有無等を調べ、生理的パラメーターとの関係を検討した。出身地の気候との相関をみると,対象者数が少ないために5%水準では有意でないものの,暑熱耐性の指標である皮膚血流量の感受性および発汗量は出身地域と比較的高い相関を示しており,出身地域による暑熱耐性への影響を伺わせる. 3)13人の大学生を被験者として、運動時体温上昇時における、前腕皮膚血流量増大や換気量の増大を測定し、運動時における体温上昇に伴う換気亢進反応が皮膚温の違いによって影響を受けるのかどうかを検討した.その結果,深部体温の上昇に対する換気亢進反応は,皮膚温の違いには影響を受けない,ことが示唆された.このことは、暑熱対策としては、一時的な皮膚温低下などよりも深部体温の低下が非常に重要であること、運動時の換気亢進(息苦しさ)も体温上昇に強く関係することを示唆している。 このような体温調節と運動、環境要因に関する基礎的知見は、体力科学及びスポーツ科学における今後の研究、および国民のスポーツや健康に対して大きく貢献するものと考えられる。
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