研究概要 |
「競技力」は、わが国のスポーツ界で広く一般に用いられている重要な用語であるが、漠然とした曖昧な解釈が許されてしまっている。しかし、この競技力の内実に何某かの共通了解を実定させなければ、実際のゲームや指導の場面における指導者や競技者や研究者間の議論は不毛なものへと陥ってしまうことは必定である。そこで本研究では、可視的で一回性的で多様な表層でのスポーツ現象を支えて、それを深層で秩序づけている、「身体性」「知性」「感性」を構成契機とする不可視の仕組みを「スポーツ構造」という分析装置に見ることで、「スポーツ構造がバスケットボールの競技力を規定する」という独自の命題設定から、バスケットボールの競技力を規定する諸要因の解明を目的とした。この目的を達成するために、日・独・米の三カ国のバスケットボール並びに競技力等に言及する文献の収集とそれらの精読を行い、三契機の一つである「知性」について、三年の間、次のような研究課題について検討を行った。まず、類概念としてのボールゲームについて、その競技力の内実を究明するための普遍的な枠組みに関する予備的考察を行った(研究課題1)。次に、「原理論的アプローチ」を新たな研究方法として提案することで,従前とは全く異なる視点から「戦術研究」の究明を行った(研究課題2)。さらには、バスケットボール競技におけるチーム戦術を深層で規定する構造とその原理・原則の究明を行った(研究課題3)。なお、研究課題1は、第16回日本スポーツ方法学会で、研究課題2は、第56回日本体育学会での「スポーツの戦術」に関するシンポジウムで、それぞれ成果を発表した。さらに、研究課題3は、「バスケットボール競技におけるチーム戦術の構造分析」(スポーツ方法学研究,17(1):25-39,2004)という題目の論文に纏められ、「平成16年度日本スポーツ方法学会学会賞」を受賞した。
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