研究概要 |
本研究では,生体の外部環境変化に対する筋活動調節作用による動作適応を考慮して,スポーツシューズの性能を評価することを目的として,運動学的解析,動作筋電図解析から筋調節機能を評価し,ランニングや連続ジャンプ時の筋調節機能と下肢関節スティフネスとの関係と,シューズ素材の機能が下肢関節スティフネスと筋調節機能に及ぼす影響を検討した. 1)「シューズの着用が跳躍動作中における下肢の動作制御に及ぼす影響」では,ジャンプ運動時にシューズ着用と裸足条件での運動学的・動力学的要素,筋活動の観点から分析を行った.その結果,条件による動作の違いは,接地時の足関節のスティフネスと仕事量に顕著な差がみられた.また,関節スティフネスから2条件間の動作変化を定量的に表現することができた. 2)「ランニングによる下肢の筋疲労の評価と動作制御に及ぼす影響」では,筋電位のオンライン解析システムを構築し,トレッドミルによる一定速度ランニング中の筋電位による筋疲労の評価と動作変化について検討した.その結果,ランニング中に即時的に筋疲労や動作変化を評価することが可能になった. 3)「運動負荷強度とランニング中の足関節動作の関係」では,換気性作業閾値(VT)を用いた相対運動負荷速度における足関節動作の特徴を明らかにし,ランニングシューズの評価実験での適切な負荷速度について検討した.その結果,数種類の特徴の異なるランニングシューズを運動学的な指標を用いて評価する場合,VTの35%超過速度が最も適切であった. 4)「素材の物理特性が下肢関節動作と筋活動に及ぼす影響」では,エネルギーの吸収が大きい素材上でのジャンプ運動について,筋活動量,関節仕事量,関節スティフネスの変化を検討した.その結果,運動時の関節角度,関節モーメント,関節仕事量,スティフネスには素材別に差が認められなかった.素材の物理的特性の差が生体の筋調節系の作用によって相殺される結果を示した.
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