研究概要 |
1.資料収集について 1)体育スポーツ研究所の「Theorie und Praxis der Leistungssport(競技スポーツの理論と実践)」誌全冊、2)専門書については、「Trainingswissenschaft(トレーニング科学)」(1994,1997,2003)、「Bewegungslehre-Sportmotorik(動作学・スポーツ運動学)」(1960,1976,1987)、「Sportmotorik」(1978,1984,1987)、3.)研究報告書については、体育スポーツ研究所の未公刊の報告書を中心に収集した。4.)旧ドイツ体育大学の教科書についても、1970年以降のものについて、代表的なものを収集した。5)博士資格論文については、領域毎の代表的なものを収集することができた。 2.トレーニング科学の用語について 2.1.ライプチヒ学派トレーニング科学の特徴の一つが用語の工夫である。「パフォーマンス前提」「パフォーマンス構造」「パフォーマンス実施」などの用語を提案し、試合場面でのパフォーマンスを、指導者が観察し、分析しやすいようなトレーニングの論理性を明示する。一般には、基礎科学といわれている生理学や心理学やバイオメカニクスの専門用語がそのままつかわれたりするのであるが、それでは多様な試合やトレーニング場面での事象を捉えることには十分ではなく、また、指導者や選手の実体験という狭い範囲でつくられる経験的な言葉でも十分ではなく、その中間にこうした用語を創出し、科学と現場との連携をはかっている。 2.2.トレーニングサポート研究について。特定の選手を対象にしたサポート研究は個別事例的な面が強調されるため、一般的な知見を得るという面や再現性という科学の基本的な特質と矛盾する場合がおおいのであるが、多要因のトレーニングシステムを対象にしているトレーニング科学の中心的研究法として確立されていることが確認できた。とりわけ、種目群を単位とした研究対象のカテゴリーには示唆するところが多い。 3.今後の研究にむけて スポーツ競技力をめぐる、国際的な開発競争が激化するなかで、国家施策の一環としていちづけられた事例として、東独のスポーツ科学研究体制はさまざまな示唆をわたしたちにあたえてくれる。しかし、その研究の蓄積は膨大なものがあり、今回の研究では、その手がかりと全体の見取り図をつかむにとどまった。今後各分野における詳細なデータ解析が必要となるだろう。
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