研究概要 |
本研究では,日本各地において行われてきた伝統的な打球戯の形態と変遷について明らかにすることを目的とした. 具体的には,今日まで継承されている八戸・長者山新羅神社の加賀美流騎馬打毯と徒打毯,山形・豊烈神社の騎馬打毯と徒打毯,宮内庁主馬班の騎馬打毯,薩摩・大隅地方のハマ投げ,徳島県で行われていた騎馬打毯などについて,文書を中心とした史料の調査・収集と収集史料の解読・吟味,現地調査による動画・静止画の撮影・編集とデータの蓄積を行い,それらをもとに,各地の伝統的な打球戯の形態と移り変わり,独自性について考察した.その主な内容は,次のようにまとめられる. 1.現在薩摩・大隅地方において継承されているハマ投げは,伝統的な競技法に基づきながらも異なる形態で行われており,さらに普及のための活動もなされている. 2.徳島県では,特に1938年5月以降,馬産熱の振興と馬の育成,馬術の向上,尚武の精神の高揚などを目的として騎馬打毯の大会や講習会が盛んに開催されるようになり,第二次世界大戦中まで続けられていた.戦後は,馬の需要の減少等に伴って徐々に衰退していったと考えられる. 3.八戸と山形の騎馬打毯は祭礼・神事と結びついていること,また八戸では免許制度も確立されていることが,今日まで継承されてきた要因であると考えられる. 4.徳島の騎馬打毯の場合は,儀礼的な要素をもっていなかったことが衰退した一因であると考えられ,ここに,八戸・山形の騎馬打毯の展開とは異なる徳島の騎馬打毯の独自性があるといえる.
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